スタジオ『ミュゲ』

オーナーのブログ

2026年8月23日

美を磨き続けた身体が残す静かな余韻

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エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス

先月、英国ロイヤル・バレエ団の「ジゼル」を味わい
そして今回は、パリ・オペラ座バレエ
「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」を鑑賞しました

同じバレエという芸術でありながら
続けて観ることで

それぞれの国やバレエ団が育んできた美意識や表現の違いを

少しずつ感じられるようになった気がします

🌿

「ジゼル」を観たときには
物語の中にある人間の感情や、舞台上で繰り広げられるドラマに
強く心を動かされました

英国ロイヤル・バレエは
演劇の国イギリスらしく
踊りの中に人物の心情や物語を深く感じさせる
演劇性の高さがあるように思います

その「ジゼル」を味わった後だったからでしょうか

今回のパリ・オペラ座バレエのガラ公演では
少し距離を置いて
衣装の美しさ、身体のライン、音楽との調和、
そして作品そのものが持つ造形美を
静かに堪能することができました

その中でも
今回来日されているベテラン・エトワール
ドロテ・ジルベールさんの「瀕死の白鳥」は
心の深いところに残りました

🌿

美しく、そして哀しい白鳥

大きな動きで何かを訴えるのではなく
身体のわずかな動き
呼吸、視線、指先、
そして最期へ向かっていく時間そのものが
白鳥の命を語っているようでした

舞台が終わっても
その姿が心の中から消えません

美しいものを観たというだけではない
静かな余韻として残っています

🌿

バレエを観ていると
人間の身体というものについても考えます

日々、自分の身体と向き合い、
鍛え、整え、
美を磨き続ける

一日、二日で身につくものではなく
長い年月をかけて積み重ねたものが
舞台の上で、ほんの一瞬の動きとなって現れる

そこには
持って生まれた才能もあり
それを支える努力もあり
そして何より
自分の身体と芸術に向き合い続ける時間があるのでしょう

才能も努力も
どちらも尊い

そして、その積み重ねの先にしか辿り着けない美しさがある

そんなことを
今回の舞台から感じました

そもそもバレエは、
15世紀頃のルネサンス期、イタリアの宮廷で生まれました

まだ「バレエ」という言葉もなく
宮廷の社交の中で
裾の長い衣装をまとい
優雅な所作で踊る宮廷舞踊から始まったといわれています

それがフランスへ伝わり
17世紀にはルイ14世がパリオペラ座を完成させ
18世紀にはパリオペラ座バレエ学校が設立され
フランスバレエの体系化が進んでいきます

やがて、フランスで発展したバレエは
ロマン主義の時代に入り
「ジゼル」に代表される
ロマンティック・バレエへと花開いていきました

妖精や精霊、夢と現実、
愛と死――

幻想的な世界を表現するために
トゥシューズによる
まるで重力から解放されたような踊りが

発展していきます

そしてフランスからロシアへと伝わったバレエは
さらに高度な技法を発達させ
チャイコフスキーの音楽による

「白鳥の湖」
「眠れる森の美女」
「くるみ割り人形」

という、今も世界中で愛される三大バレエ作品へとつながっていきました

こうして辿ってみると
バレエは一つの国だけで完成した芸術ではなく
イタリアからフランスへ
フランスからロシアへ
そしてイギリスをはじめ世界各国へと渡りながら
それぞれの文化や美意識を取り込み
豊かに育ってきた芸術なのだと感じます

🌿

そして今
私たちは日本にいながら
その歴史の流れを受け継いだ
世界最高峰のバレエ団の舞台を観ることができます

日本には
ヨーロッパのように長い歴史を持つ劇場や
バレエ文化を支えてきた舞台環境が
まだ十分に整っているとは言えないのかもしれません

だからこそ
世界のバレエ団が日本へ来てくださり
私たちの前で舞台を届けてくださることは
本当にありがたいことだと思います

パリ・オペラ座も
これから大規模な修復工事のため
長い期間、舞台を離れることになります

そして、時を経て――

再びパリ・オペラ座の舞台で
素敵なバレエを観ることができたら

そのとき私は
どんな自分になっているのでしょう

また美しい舞台に出逢い
その時にしか感じられないものを味わい
静かな余韻を持ち帰る

そんな未来を想像するだけで
少し楽しみになります

今回の「エスプリ・ドゥ・ラ・ダンス」で心に残った
ドロテ・ジルベールさんの「瀕死の白鳥」

美しく、哀しく、
そして静かに燃えるような生命

長い年月をかけて磨き続けた身体が
ほんの数分の舞台に残したもの

その美しさを
私はしばらく心の中で味わっていたいと思います

美しいものを観ること

そして
美しいものを美しいと感じられる自分を
これからも育てていきたい

🌿

そんなことを思わせてくれた
素敵なバレエ観賞でした